サステナブルな暮らしや買い物の道しるべになるようなお店があったらいいな。そう思った二人は、自分たちでつくる選択をした


安曇野市豊科に新しく完成した安曇野市総合体育館のほど近い場所に、昨年2021年9月にオープンした素敵なセレクトショップがあります。
埼玉県から安曇野市に移住してきた生田夫妻が経営する「スケートボード&エコセレクトショップ・ハカルAZUMINO」です。
スケートボードとオーガニック系フードを中心としたエコ商品のセレクトショップというちょっと珍しい組み合わせ。店内にはカフェコーナーもあり、オーガニック素材を使ったカフェメニューが楽しめます。店名の「ハカル」には、ゴミ削減に貢献できる「量り売り」を広めたいという生田さんの思いが込められています。

入り口で出迎えてくれる素敵なディスプレイ
素敵にリペアされたリユース家具のカフェコーナー
ハカルお勧めのオーガニックドリンクが楽しめる

なぜ、スケートボードとエコセレクトショップの組み合わせの店が誕生したのか

オーナーの生田 聖人(いくた まさと)さんは、1984年愛知県名古屋市生まれ。愛知県の大学で経営学を学び、卒業後は東京の医療機器メーカーに就職。そのころ、奥様の佳絵(よしえ)さんと知り合って結婚。現在、長女(8歳)、長男(6歳)、次男(2歳)の3人のお子さんがいらっしゃいます。

「高校卒業後、大学浪人するもやりたいことが見つからず進路に迷っていました。結局、親から猶予期間をもらう形でなんとか大学に進学。実家が不動産会社を経営していたこともあり、自分も将来は店を持ちたいという思いがあったので経営学科を選びました」

その後、東京の大手スポーツ店に転職。系列のスケートボード・スノーボード・サーフィンに特化した店に配属されます。
「高校の頃からスケートボードを楽しんでいたので、自分にぴったりの職場でした。スノーボードも本格的に始め、当時から白馬によく来ていました」

その後、残念ながら勤務していた店舗が閉店。アウトドア専門店に転属されました。
「エコとかサステナブルを意識し始めたのは、このアウトドア店に配属されたころからです。スタッフ研修で山に行ったり、いろいろなアウトドア情報や知識を学ぶうちに徐々に、自然環境の大切さを実感するようになりました。その思いはどんどん膨らみ、自然環境に恵まれた長野県に住みたいと思うようになったんです」
アウトドア店に働きながら、長野県への移住を準備。移住を考えるようになってからは、子どもたちの未来を思うことも多くなり、地球環境のことなどをますます意識して考えるようになったそうです。

「地球環境に負担をかけずに暮らすには、買い物の仕方だったり、生活自体も変えなくてはと思うようになったんですが、そんな暮らしや買い物の道しるべになるようなお店が周りにないと感じていました」
だったら、自分たちでそんな暮らしの気づきやきっかけとなるようなお店をつくればいいじゃないか。もともとスケートボードのお店をやりたいと考えていたので、スケートボードとの組み合わせの店づくりをめざし始めたそうです。

雄大な北アルプスと多くの人たちとの縁やつながりが、二人を安曇野に向かわせた

「移住先を具体的に考え始めたとき、スノボで通っていた白馬で見た北アルプスの風景がものすごく印象的だったので、まずは、長野県の中でも北アルプスの見える中信か北信地区で探そうと思いました」
移住の相談を重ねるなか、縁あって塩尻市の不動産会社に安曇野の物件を紹介してもらうことに。
「本当に、いい出会いと縁が重なり、最終的には移住者の先輩である安曇野在住のご夫婦のアドバイスなどもあり、移住と店舗建設地を決めました」

家族5人(当時次男は生まれて三か月)での移住だけでも大変なエネルギーが必要ですし、店舗の建設となるとクリアーしなくてはいけない課題が次々と押し寄せてきたそうです。しかし、お二人の志パワーはそれを上回っていました。
「店舗の建設中もいろいろな方にお会いして、人のつながりをつくってきました。とにかく、「量り売り」を知ってもらいたいという一心で、体験してもらう人を増やすため、多くのイベントに出店しました」


継続してもらわなくても、一度経験してもらうことで、「ゴミを出さないってどんなことなのかな?」という発想につながってくれるかもしれない。そのために、その一つの方法としての量り売りを多くの人に体験してもらうことが大事だと、生田さんは考えています。

自分が好きなものを、欲しいだけ買えるのも量り売りのメリット
ドライフーズは、ビンに詰めるとけっこうオシャレ!
洗剤もビンに入れてゴミ削減
量り売り用の容器として100円で購入、使い終わったら返却で50円バックの「デポジットシステム」もちょっといい経験

アウトドアショップ時代、自然に触れるなかで芽生えた「ゴミを出したくない」という思いが、今の行動の始まりだったという生田さんの話を聞きながら「自然界にはゴミはない」という言葉が思い浮かびました。

オーガニック グラノーラのおいしさが、たくさんの人のつながりを生み出した

セレクトショップの人気商品の一つが、管理栄養士と中医薬膳栄養士の資格を持つ奥様の佳絵(よしえ)さんが、100%オーガニック素材でつくるグラノーラです。店舗でもリピーターの多い、身体がほしがるおいしさ(個人的意見ですが)のグラノーラは、お店のオープン前から人とのつながりを生み出してきたkey商品でした。

「安曇野に来てからたくさんのマルシェに出店しました。一番最初のきっかけになったのはお寺(安曇野市・高山寺)で開催されたマルシェです。100パーセントオーガニックのケーキやグラノーラの量り売りで参加。好評をいただいたおかげでいろいろなつながりができるきっかけになりました」
この最初のイベントに誘っていただいた方とのつながりも、佳絵さんがつくるグラノーラだったそうです。
「移住前から神奈川のプラスチックフリーのお店に卸してもらったり、安曇野に来たばかりのときは、お会いした人へのプレゼントにしたり。有機グラノーラの縁で、新しいマルシェのお誘いをいただいたり、いろいろな人の紹介につながったり、知人のいなかった安曇野地域でたくさんのつながりを生み出してくれました。2021年9月のオープン時には、そんな多くの人のつながりのおかげで、たくさんの方に来店いただきました。今では、お店を手伝ってくれたりする方もいたりして。私たち夫婦だけではおぼつかない店ですが、皆さんのつながりと協力で成り立っている感じです」

店内奥にある厨房で、佳絵さんがつくるオーガニック素材にこだわったグラノーラは、厳選素材のため常時ラインナップできていないこともあるようですが、店の定番人気商品です。

「これといった夢があったわけではなかった私ですが、夫の夢の実現を応援するために始めた有機グラノーラづくりが、今の自分にとってのやりがいや生きがいになっています。それに、きっと私にとっての夢は、誰かの夢を応援することなんじゃないかな。と思うようになりました」
とってもフレンドリーで快活な佳絵さんは、楽しそうにそう語ってくれました。

「こんな暮らし、素敵でかっこいいかも」と思ってもらえたら最高

現在、量り売りのドライフルーツや洗剤(環境負荷の小さいもの)、自然素材の歯ブラシやキッチン用品、体がよろこぶオーガニックフード類など、生田さん自らが納得した商品がところ狭しと並ぶ店内。サステナブルなライフスタイルの提案を通じて「こんな暮らし、素敵でかっこいいかも」と思ってもらえたら最高だといいます。今後は、もっと地産地消を意識した地元のオーガニック系商品を増やしたいと考えているそうです。

量り売りのコーナーには、信州産の乾燥キノコやオーガニックグラノーラ、アフガニスタンの農村を応援するフェアトレード商品でもあるアフガニスタン女性たちのつくる無添加ドライフルーツ・ナッツが並ぶ。
自然素材の歯ブラシや石けん
自然素材のストロー・キッチン用品

「お店のセレクト商品、量り売りの商品に、有機栽培や自然栽培の地元商品を増やしていきたいです。地元の農園さんとかに、こちらから声をおかけして、きちんとお店の趣旨を説明して、理解して共感いただいたうえで「卸してもいいよ」という方とのつながりを大切にしながら、商品を少しずつ増やしています。だから、自分が気に入った、自らがお薦めできるものだけを並べています」

地元のオーガニック農産物と加工品

やりたいことがいっぱいな生田さんには、量り売りの日用品を増やしたいという夢があります。地元の味噌や醤油、油などの調味料の量り売りができたらいいなと話してくれましたが、その実現のためには冷蔵施設が必要だったりと、少しハードルが高いようです。とにかく、おいしい地元のこだわり商品の量り売り化は、今後の大きな目標となっています。
「もちろん各所で販売されている、素晴らしいこだわりの地元商品はたくさんありますが、小売店で販売するためにプラスチック容器での販売が主流なのが少し残念です。素晴らしい商品だからこそ、少しでも量り売りでの販売を増やせればいいなと思っています」

店の来店者の多くは、子育て世代の30代。環境意識の高い世代のプラットフォームになりつつある印象です。

「マルシェイベントやSNSで知ってきてくれた方が、またご友人を連れてきてくれたり。そのご友人がまた別の方を連れてきてくれたり。有機的なつながりでなんとかやっている感じです」

サーキュラーエコノミー※(循環型経済)にも賛同。廃棄を減らし、古いものを再利用・修理・リメイクしながら長く使えるものも扱っていきたい。と語る生田さんは、古材や古布などのアップサイクル商品にも意欲的です。
「この風呂敷やテーブルクロスは、古い着物などの生地を使っているんですが、味があると思います。地元作家さんがつくっているんですよ」

古い着物を使った風呂敷
アップサイクルのテーブルクロスも素敵

そうそう忘れてはいけません。ここはスケートボードショップ

お話を聞いていると、つい忘れそうなのですが、そもそもここはスケートボードショップ。生田さんお勧めの素敵なボードが並びます。地元のアーチストさんのアート教室に通っている小さな子どもたちが、自由に描いてくれた壁画アートが素敵な「2階の試走スペース」も完成が近いようです。
「今年オープンしたANCアリーナ・安曇野市総合体育館にはスケートボードパークもあるので、暖かくなったらイベントなど、PRも兼ねて動き出したいです。安曇野市でこれからスケートボードを始める方が、家族で集える楽しいボードショップになれればと思っています」

子どもたちのエネルギーがすごい!
ショップの2階は、スケートボード試走スペース

将来的には、自店舗で独自のマルシェも開催したいと語る生田さん。人の輪を広げつつ「こんな暮らし、素敵でかっこいいかも」といった気づきや共感が少しずつですが確実に広がっている印象です。
二人の店づくりの出発点だった、地球環境に負担をかけずに暮らす方法やそのための道しるべとなるような店として、ハカルは日々前進しています。
生田夫妻のこれからの取り組みがますます楽しみです。

サステナブルな啓発メッセージがいいですね

スケートボード&エコセレクトショップ
ハカルAZUMINO
長野県安曇野市豊科175-14
https://www.instagram.com/hakal_azumino/
https://www.facebook.com/hakal.azumino/

※環境に負担をかけない(環境を再生する)循環型経済
「サーキュラーエコノミー」

3つの理念
1.ごみ・汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)
廃棄・汚染につながらず、長く使うことができ、その後自然に返すことができるよう、もしくは資源として使い続けられるように最初から設計する必要がある。ごみや汚染となってからでは、できることが限られてしまう。
2.製品と原材料を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)
最大限の価値を発揮する状態で、資源をなるべく長い期間使い続けることが重要。多くの場合、製品が作られる時、原材料と労働力、そしてエネルギーが必要となるが、不要になると製品を捨ててしまう。このとき、製品に使われた原材料だけでなく、労働価値やエネルギーも廃棄されてしまう。
3.自然の仕組みを再生する(Regenerate natural systems)
自然の仕組みから発想する。すべてのものが巡る自然の仕組みは、サーキュラーエコノミーの概念そのものだ。自然の中には「ごみ」という概念がない。マイナスをゼロにという考え方ではなく、サーキュラーエコノミーとは、周りに良い影響となる、プラスを作り出すやり方へと作り直すことに他ならない。
(出所:エレンマッカーサー財団サーキュラーエコノミープログラムより)

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